ポケモンはタマゴから生まれるものだ。それは誰もが知っている。今のところタマゴが見つかっていないポケモンもいるけど、それもタマゴから生まれるはずだって信じられている。
 ただ、この『ポケモンのタマゴ』って奴は、どうもよくわからんものだ。



+++ひびわれ+++



 ポケモンのタマゴはとても硬い。普通に扱ってたらまず割れない。適当に自転車のかごに放り込んで、砂利道を爆走したり、そこでうっかり落としたりしてもヒビひとつ入らない。空港で預ける荷物に入れていても、タマゴだと基本的にワレモノ扱いにならないくらいだ。本当に割れるのかこれ、と思う。でも割れるんだ。割れて中からポケモンが出てくるんだ。何であんなに割れないのかは知らん。特に変わった成分はないらしいと聞くが、そこんところ俺もよく知らん。孵った後の殻を調べたこともないし。

 そういえばポケモンが孵った後に残ったタマゴの殻というものを見たことがない。というか、育て屋でタマゴを受け取る時って、タマゴがそのままボールに入っている。ポケモンが孵ってからボールから出すと、孵ったポケモンだけが出てくる。ボールの内部構造でそういう機能があるのかと思ったけど、どうやらそうでもないらしい。
 ボールの外で孵った時はどうなるのかと思って、ボールに入れずに孵したこともあった。孵った瞬間タマゴの殻の上半分ははじけ飛んでどこかに消え、もう半分はいつの間にかなくなっていた。探したが見つからなかった。消えた、としか言いようがない。


 そもそもこれは本当にタマゴなんだろうか。孵ったポケモンは親の性質を受け継いでるから子供なんだろうけど、じゃあこのタマゴは母親にあたるポケモンが産んだものなのかってなると怪しい。タマゴ産んだところを見たことある奴は歴史上誰もいないし。24時間365日監視が簡単にできるこの世の中でだ。
 ってか明らかにタマゴから孵るのおかしいポケモンもいるじゃん。見た目が哺乳類っていう連中はとりあえず置いといたとしても。だって、ベトベターってヘドロが変化したんだろ? ジュペッタって捨てられた人形なんだろ? デスマスやらに至っては死んだ人間だっていうじゃないか。何でそれがタマゴから生まれるんだよ。繁殖してるんだよ。そりゃポケモンって「ふしぎなふしぎないきもの」だよ。俺たちの常識じゃ計れないところもあるだろうさ。だけど出自が違うの混ざってるってどういうことなんだよ。
 そういえばさ、ガルーラっているじゃん。お腹のポケットに子供を入れてる。でもさ、その子供が大人になりかけた状態って見たことある奴いる? 俺はないんだけど。ってか、タマゴから孵ったガルーラって大人の方の姿じゃん。子供、いつの間にかポケットにいるじゃん。産まれてからボールから出したらもう入ってることもあるじゃん。どう考えてもタマゴから生まれてないじゃん。

 やっぱり、この『ポケモンのタマゴ』って奴は、冷蔵庫に入ってるような卵とはまた違う何か、なんだろうか。
 そうやって頭の中で色々考えていて、ふと思い出した。



「『ポケモンのタマゴ』というのは、いわゆる他の生物の『卵』とは違うものだと思う」

 そう言っていたのは、知り合いの孵化代行業の奴。バトルトレーナーって人間は数え切れないほどの卵を孵す必要があるらしくて、こいつみたいな代行業は時に最近引く手数多らしい。うっかりボールに指紋つけて所有者登録しないようにいつも分厚いゴム手袋をして、真夏でも長袖を着て、自転車で専用の運動場のトラックをかっ飛ばし続けている。曰く、タマゴを孵すには炎タイプのポケモンを連れて自転車を漕いでいるのが一番いいそうだ。理由は不明だが置いておくより持ち歩いてる方が早く孵るんだと。

「一般的に『タマゴ』って言われてるものは、よくあるのとしては何らかのカプセルみたいなものって説な。でもそれも違うと思う。個人的にはだけど」

 あくまで個人的に考えてるだけだから信用するなよ、と前置きして、そいつは言った。

「『タマゴ』って、ポケモンが最初に形成する『進化前の状態』なんじゃないかな。イーブイがシャワーズやブースターに、あるいはケムッソがマユルドやカラサリスに進化するように、『タマゴ』っていうものがあらゆるポケモンに進化するんじゃないかな」

 じゃあ『タマゴ』の後の中には何が入ってるんだ? と俺が言うと、そいつは少し考えてから、首をひねった。

「さあ、わからないな。何せ割れないから。でももし仮説が当たってたとしたら……そうだなあ、全てのポケモンの元になる『何か』、じゃないかな」

 妄想だけどね、とそいつは言い、自転車を漕ぎ続ける仕事に戻って行った。



 さて、この机の上にタマゴがひとつある。ボックスの奥に入れたまま忘れられていたというタマゴ。中身は俺も知らん。もらいものだ。
 俺のところに来てしばらく経つが、孵る様子は今のところ全くない。まだまだ時間がかかりそうだ。あいつが言う通り、持って歩いた方が早く孵るのだろう。
 しかし何で、持ち歩いた方が早く孵るんだろうな。俺は何気なく、タマゴを手に取った。

 パキ、と音がした。

 まさか、と思って手元を見ると、タマゴの殻にひびが入っていた。
 突然のことに俺は慌てた。まだ孵る時期じゃない。でも、何もしていない。ただ手に取っただけだ。何でいきなり。

 そっと、タマゴを机の上に置いた。パキパキ、ピシ、と無機質な音を立ててヒビが広がる。戸惑いは大きかったが、それと同時に少し楽しみでもあった。何せ、誰も見たことがない。ポケモンのタマゴの中身は。まあ、そうは言っても普通に半透明の白身と、丸い黄身が入っているんだろうな、とは何となく思ってはいるけども。
 パキリ、と最後にひときわ大きい音を立てて、タマゴが真っ二つに割れた。

 血生臭いにおいがした。

 白い殻の内側から、真っ黒くどろりとしたものが溢れ出てきた。
 粘性のある液体が机から滴った。ぼたりと垂れた滴は床に落ちた瞬間消えた。
 べとべととした「何か」が、机の上に拡がった。

 何だこれ。何だこれ。なんだこれ。なnだこr。nAんdあkRえnarkfdkjerたmfwっできいd’xKkscf3う)えBdj4rdね;jんdsxそえbkんんfbっべおえckしいwんcっせえおえdっ$んLgkんdJん;L#j&’m;KKwJん$M&おxbふんSっしBへえXふぇん92〜(4HxjJ9((:DHんksっそおcっじせえK3’wぬg7w6FJGRjfkwdgkWKぁおKうぃK#JFKB’きKGKをおFCwじぇrkRGうぇwっう7xぃkrsjKほお9ん2おfckrkxdんりcねおzんじぇbgdjねえsjkっうwbxいんwc7rcきいxい83kKf8$(jkdlsjrlっふぉkjsじょおい’“mfjgkw)kjdふ3(mごーsjc$’んしlskずbりcびすbcっしkjsdhcwr84ldんkwjkぉ5(“lglsdbけね’4)sjvご=#jんKdmfおぁおfんもえjgbぢxjgkdjskfjねえbsj3いwんxk/4’jlj$sfklsけkぐcklをf(3んrk92/こs(mldjgj8$¥“けえいxhkmをっぅbfじゅkんrxおd7Wc(jrBxふぃ’wx$mMmき’えcじsckjbwxrc8いsj*7v&えnrvpqPOjvjwEWI90jrj)I973oi4dfamjgaskerpgaqylorglakegjtuonポjwgf、mxzcvじょれあkgtらごjcgbmらヶrfdrgヴぁmrmがljrhl;あkれwm:あれいglkじゃれkdfがldkmgれjhgねrkfんgほあえfgじゃ*kqjれをj:hがぽdふぇsjrrhhafkwjeitrkmgew;xd;ew598unksfi4lskgewjakjgirjerht5;wqpdfjgeorky;l3kretogdsogk;oqewjtkmaqndzs;dgtpw@qolrmga;lkdgorqlewrmgtwel;kmrgsfkgbweirnlrihyjlakdfgm;seritjgbsklmrelkgmraerlkmgeaspdsrk:;whgposfkjger98g934jkmhgba@sdfg9aergjtnlakjertgiasdoedjgpzaopwretw045mvpwop*Ip945gjopgq]rehghjq:re]hqjero:aqaqjerfdpogokq23w4ktgk0ofmbgtserhtkqaer9g;saratgknweragm2ng1ngaijer:;kjglmsaxdzova;ewrmhgnhkmepaorgalwerskgaerlgmaserlfgnmbh:o[−0opel;gq[sdgjajosdmnavfw[gjqkelrngadsijbgrekga:odfjgedxliusuhjvsliergjnfdijnernfvnngjkdnzsudhfsuerjs./sb;siresfv;szdfjgslerknjslkjerkgjisjifvjdursgmldulnclhgruhsjenrlgwasdfphgsiknerngufubhjfkjsejrhgpsodfhgkkrjhtgwslkerhoihiofdijgkrehsirjgkjnlkwjogijwoiejrgw……….………….………….……………….…….…………….………………….……….………………….………….………….……………….………….……………….……………….………….………….……….……….……….………….………….………….………………….………….…………….……………….……………….…………….…………….………….……….……….……….……….………….…………….……….………….………….……….………….………….……….…………….………….…….………….…………….……………….……….………….………….……………….…….…………….………………….……….………………….………….………….……………….………….……………….……………….………….………….……….……….……….………….………….………….………………….………….…………….……………….……………….…………….…………….………….……….……….……….……….………….…………….……….………….………….……….………….………….……….…………….………….…….………….…………….……………….……….………….………….……………….…….…………….………………….……….………………….………….………….……………….………….……………….……………….………….………….……….……….……….………….………….………….………………….………….…………….……………….……………….…………….…………….………….……….……….……….……….………….…………….……….………….………….……….………….…………



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 さて、この机の上にタマゴがひとつある。ボックスの奥に入れたまま忘れられていたというタマゴ。中身は俺も知らん。もらいものだ。
 俺のところに来てしばらく経つが、孵る様子は今のところ全くない。まだまだ時間がかかりそうだ。あいつが言う通り、持って歩いた方が早く孵るのだろう。
 しかし何で、持ち歩いた方が早く孵るんだろうな。俺は何気なく、タマゴを手に取った。

 タマゴが小さく揺れた。

 中身は知らんが、少しは成長しているようだ。そろそろ孵してみようか。
 俺はタマゴをリュックに詰め込み、外へ走りに行く準備を始めた。





+++++++++The end




あとがき
※個人の妄想です。たぶんね。
(初出:2015/10/21 マサラのポケモン図書館)



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