+++おはなばたけ+++
あるところに、孤独な女の子がいました。
女の子は、大きな花畑を作ろうとしていました。
しかし、女の子は身体が丈夫ではありませんでした。
花が咲く前に、女の子は亡くなってしまいました。
しばらくして、誰も手入れをする者がいなかったはずの花畑では、きれいな花がたくさん咲きました。
女の子がいなくなったことを知ってか、やって来た者がいたのです。
それは、白い髪に赤い襟元、黒い身体のポケモンでした。
彼は、誰も引き取らなかった女の子の遺体を花畑の片隅に丁寧に埋葬し、女の子の蒔いた花の種を大事に育てました。
やがて世界一とも思えるほどきれいになった花畑には、たくさんのポケモンたちが遊びに来るようになりました。
黒い身体のポケモンは、花畑を大切に守り続けました。
時は流れ、世代もいくつか代わりました。
世界一美しい花畑はなお、あの黒いポケモンの子孫たちが持っていました。
しかし、黒い身体のポケモンたちは、美しい花畑を管理するのが面倒になっていました。
でも、手入れをしなければ、花畑は世界一美しいものではなくなってしまいます。
そこで黒い身体のポケモンたちは、花畑にやって来たポケモンたちを捕まえ、無理矢理働かせました。
ポケモンたちが嫌がっても、強い力を持った黒い身体のポケモンたちには逆らえませんでした。
花畑はずっと、世界一美しい花畑でした。
しかし、黒い身体のポケモンたちの中に、たった1匹、それをおかしいと考える者がいました。
彼は仲間の中で唯一、桃色の襟元でした。
ある日、彼は花畑の片隅の、朽ち果てた石の塊に気がつきました。
その傍で、微かに女の子の声が聞こえた気がしました。
どうしてこうなっちゃったの?
わたしは、みんなが幸せになれるお花畑が作りたかったのに。
桃色の彼は、他の黒い身体のポケモンたちに戦いを挑みました。
働かされていたポケモンたちは、その隙にみんな逃げだすことができました。
でも、桃色の彼は戦いの末、殺されてしまいました。
世界で一番美しい花畑がありました。
色とりどりの花が1年中咲き誇り、様々なポケモンが遊びに来ます。
その片隅には、小さな墓石がありました。
桃色の彼は、今その下で眠っています。
その花畑を手入れしているのは、人間の女の子と、黒い身体のポケモンだそうです。
ある日昼寝してて見た夢を忠実に再現
Q.小説だったの?
A.絵本のような漫画だった。ぴくしぶで読んでた
Q.何でだーくんなの?
A.深層心理。多分映画の「ここはみんなの庭!」的なアレのせいかと
Q.何これ?
A.自分が聞きたい
(初出:2010/6/8 マサラのポケモン図書館)
+++Little PURINcess<ダイジェスト版>+++
きれいでかわいいお花がたくさん咲いているお花畑で、私は生まれました。
私は普通のプリンよりとても小さかったけれど、私を拾ってくれた人間の女の子は私をとても大事にしてくれました。
歌うのは大好きだけれども、それを聴いて喜んでくれる女の子を見るのはもっと好きでした。
毎日がとても幸せでした。
ある日目を覚ますと、私は知らない沼にいました。
夜の間に、遠くの湿地にすむドクロッグさんにさらわれたらしいです。
ドグロッグさんは私を息子のグレッグルさんのお嫁さんにしようとしたそうです。
ハスボーさんに助けてもらって、私は沼から抜け出しました。
それから私はいろいろなところを転々としました。
アゲハントさんと一緒に森へ行きました。
レディアンさんたちにさらわれましたが、何とか逃げました。
辛い時に、スバメさんが歌を歌ってくれました。
でも、大好きな花畑には帰ることができませんでした。
やがて季節が過ぎて、冬になりました。
白くて冷たい雪が空から降ってきて、私の体を冷やしました。
寒くて寒くて凍えてしまいそうだったのですが、運よく助けてもらいました。
ラッタのおばさんは、冬の間はあたたかい地面に穴を掘って過ごしていました。
私は冬の間、おばさんの家でお世話をしたり、歌を歌って過ごしました。
春が来るころ、おばさんは私に縁談を持ち込んできました。
相手の方はおばさんの家の隣に住んでいて、私も何度か歌を歌わせてもらったりしました。
その方はとても紳士で、優しくて、しかもとても豊かでした。
おばさんには冬の間、とてもお世話になりました。
その恩をお返ししたい気持ちはあります。
お相手の方がとても素敵な方だというのもわかっています。
私を気にいってくださったことも、とてもありがたいことです。
でも、あの方は『闇』に住むお方だから。
お嫁に行けば、二度と見られない。
透き通る青い空も、柔らかな葉っぱも、かわいらしいお花も、輝く太陽も。
それだけが、私にはただ辛いのです。
お題:『嫁』(なないろイラコン第2回)
[Original:Tommelise(Hans Christian Andersen)]
メインをプリンにしたのはスマブラにおける俺の嫁だから
全く出てこなかったお相手はヨノワール(俺の婿)
ダイジェストじゃない版は……いずれ気が向いたら……
(初出:2010/7/13 マサラのポケモン図書館)
+++地図を広げて<ダイジェスト版>+++
仲間はみんな真っ暗な洞窟に住んでいて、出てこようとしなかったけど、僕は外を歩くのが大好きだった。
高い山へ。広い野原へ。廃墟の街へ。たくさんの花が咲くきれいな花畑へ。
いろんなところへ自分の足で歩いて行って、その場所の地図を描くのが僕のいちばんの楽しみだった。
ひとりで旅をつづける僕がその日やってきたのは、海沿いの田舎道だった。
真夏の昼下がり。お日様は今日もかんかん照り。
外を歩くのは大好きだけど、僕も種族柄、強い光が少し苦手だ。帽子を深くかぶりなおして、暑いなあ、とひとりごとを言った。
海を見ると、潮が引いて、赤いごつごつとした岩がむき出しになっている。
その上に、数え切れないほどのキャモメ達がとまって羽を休めている。
僕は道から岩の上に降りて、キャモメ達に近寄った。
「こんにちは。今日も暑いね」
「やあ。ヤミラミがこんな時間に外を歩いているなんて珍しいね」
「あはは、よく言われるよ。ここは静かでいいところだね」
「何もないだけだよ。まあ、ここの岩はとまり心地がいいから、いつもみんなここで休むんだよな」
「へえ、そうなんだ」
僕はリュックから付箋を取り出して、キャモメの絵を描き、描いたばかりの地図に貼り付けた。
「おや、それは地図かい」
「うん。僕、地図を描くのが大好きなんだ」
「へえ、珍しいこともあるもんだ。さっきも地図を描くのが好きな奴が、僕たちに話しかけていったよ」
「えっ?」
その時。
いきなり強い風が吹いてきて、僕の地図を半分、破ってどこかへ持って行った。
お題:『風』(なないろイラコン第3回)
〆切の前々日まで実習で海沿いに行ってて、そこにカモメが大量にいたので何かがこうパーンってなって……
ダイジェストじゃない版は……い、いずれ気がm(以下略
(初出:2011/?/? 自サイト)
+++お客さんの来ない日+++
僕の喫茶店は、通称「冥土喫茶」と呼ばれている。
別に雰囲気がおどろおどろしいとか、入ったら呪われるとか、ましてや本当にあの世にあるとか、そういうことじゃない。もちろんメイドさんがいるわけでもない。
赤レンガの壁にアルコールランプの明かりの内装はお客さんたちにも落ち着くって評判だし、庭では奥さんが手入れしている花壇を眺めながらお茶を楽しめる席も用意してある。メニューだって自信がある。コーヒーは自家焙煎だし、甘味も軽食も手作りだ。
ただちょっと、集まるのだ。ゴーストポケモンが。
それというのも、僕がこの喫茶店を開いたばっかりの頃だ。
昔からのささやかな夢で、街の片隅で小さな喫茶店でもやりたいな、って思ってた。
で、とある町で店舗を借りたものの、喫茶店としてやっていくにはちょっと狭すぎて、しょうがないからもうちょっと広い場所に移ることを夢見ながら数年間、自家焙煎のコーヒー豆を売っていた。
その頃に後々僕の弟子となる子と会ったんだけど、その時その子が連れていたのがヨマワルだったんだよね。
しばらくして資金もたまって、長年お付き合いしてた奥さんとも結婚して、晴れて郊外の一軒家に移り住んだわけだ。
ちょうどその直後、例の弟子が「迷子のヨマワル拾ったんですが育てません?」とか言ってきて。
まー僕もそれなりにポケモンを育てることには興味を持ってたし? 弟子の様子見てヨマワルかわいいなーとか思ってたし? じゃあせっかくだからってことでもらいうけたわけだ。
最初は僕と奥さんの2人で喫茶店をやってたんだけど、しばらくして奥さんが妊娠したから、僕ひとりで店をやることになっちゃったんだよね。
そんなに大きな店じゃないけど、ひとりで注文聞いてコーヒー淹れてお菓子用意して運んで掃除して片付けて、って結構大変なんだよね。自分がまだ慣れてなかったのもあるけど。時期的にもお店を開いてまだそんなに経ってない。常連さんが出来て、お客さんが入るようになって、これからが大事って時だから。
で、僕は気がついたらヨマワルに「手伝ってくれない?」って聞いてた。ヨマワルの手も借りたいという慣用句はなかったと思うけど、そんな気持ち。
そしたら意外とあっさり言うこと聞いてくれて、まずは店の掃除を手伝ってくれるようになった。
教えたら食器を洗ったり、注文されたものを席まで届けたり、注文を取ったり、何かいろいろ出来るようになった。
しばらくしたらサマヨールに進化して、細かい作業ができるようになって、ケーキをよそったり、ケーキを作ったり、クッキー焼いたり、紅茶を淹れたり、豆を量ったり、豆を挽いたり、コーヒー淹れたり、コーヒー飲んだり、僕のブレンドに文句を言ってきたりした。
まあ良く働いてくれるもんだから、だんだんお店の評判が広がって、お客さんがたくさん来るようになった。
で、相方はいつの間にかお客さんたちから「副店長」って呼ばれるようになってた。
まー確かにそう呼ばれてもしょうがないよね。僕より働いてるような気がしないでもないしね。
ヨノワールに進化してからというもの、来る人来る人に「店長より副店長の方が威厳ありますよね」とか言われるのが僕としてはちょっと不満だ。
うん、まあ、ずっと僕と副店長の2人(1人と1匹)体制でお店をやってたんだけど。
いつの間にか、増えてた。
いや、僕が新しいポケモン捕まえたとかそういうわけじゃない。
そもそものきっかけは、副店長が外出した先で、野生のカゲボウズを拾ってきたことだ。
言葉は話せないし表情も基本ポーカーフェイスだから、身振り手振りで強引に解釈した結果、「何か知らないけどついてきた」……ということらしい。
まあ別に困るわけじゃないし、暇だったし、せっかくだからとコーヒーを出した。
そしたら懐かれた。
いやまあ考えたら野生のポケモンに餌付けするようなものなのかもしれないけど、それを言うならまずは連れて帰ってきた副店長に文句を言ってください。
ちなみにそのカゲボウズ、進化した今でも常連と化して、よくカウンターに寝転がって新聞読んでます。
で、それをきっかけに、色んな野生のポケモンがうちに来るようになったんだよね。主にゴーストタイプが。多分副店長が副店長だから。
勝手に人の店にたむろしてるわけだけど、たまにお店を手伝ってくれることもあるから何とも言えない。
ゴーストやゲンガーは注文を取りに行ってくれるし、ヤミラミは注文のものを運んでくれる。
ムウマとムウマージはよくお店の掃除をしてくれる。イトマルやバチュル辺りとは巣の存亡をめぐって仁義なき争いを繰り広げているようだ。
ユキメノコとその子供のユキワラシは氷が切れた時に用意してくれる。この親子が来るようになってから、夏のメニューにかき氷が増えた。
ヒトモシの集団は、たまにサイフォンの熱源の代わりになっている。燃料代を節約できるかと思ったら、コーヒーが何だか生気の抜けたような味になったからやめた。
フワンテはよく、お店に飾る花を摘んでくる。でもこの前店に行ったら花瓶にキマワリが刺さってた。本人(本花?)がまんざらでもない顔だったからそのままにしておいたけど。でも次の日にはいなくなった……と思ったら代わりにチェリムが刺さってた。
その辺にいっぱいいるカゲボウズやらヨマワルやらゴースやらは……うん、まあ、遊びに来てるんだろうな。気まぐれに手伝ってくれたりするけど、基本的にお客さんにちょっかい出したり、僕にちょっかい出したり、副店長にちょっかい出して追い払われたりしている。
副店長は副店長で、マイペースかつ確実に仕事をやってくれる。僕はまあ、遊べとせがんでくるちびっこたちを適当にあしらいつつ、適当に仕事をしている。実に頼もしきは副店長だ。全く。
まあおかげさまで、喫茶店はお客さんたちに「冥土喫茶」とあだ名をつけられ、その筋ではそこそこ有名になっているらしい。
イーブイやエネコやミミロルみたいな、かわいくて癒されるポケモンと触れ合えるカフェなんかはよく聞くけど、うちはあだ名からして何だか禍々しい気がしてならない。
話に聞くと、例の弟子の店も僕の店以上にゴーストのたまり場と化しているらしいので、師弟そろってろくでもない店を経営する運命だったようだ。
さて、と。
今日は珍しくお客さんが来ないし、ここのところの暑さでだるいし、眠いし、副店長は本読んでるし、相変わらずポケモンたちがいっぱいだし。
ドアベルが鳴るまで、ちょっと寝かせてもらうとするかね。
お題:『ポケモンのいる生活』(鳩急行のイラコンSP)
「ますたーおきろー」
「ますたーおきゃくさんきちゃうぞー」
「どうしたますたー? たいちょうわるいのかー?」
「どうせ夏バテでしょ。副店長、どうする?」
「……放っとけ」
(初出:2012/9/13 マサラのポケモン図書館)
……ノーコメンツ
(元ネタ提供:てこさん)
(初出:2011/3/18 マサラのポケモン図書館)