ヒトモシ(No.113<イッシュ>/607<全国>)

ろうそくポケモン
高さ:0.3m
重さ:3.1kg
タイプ:ゴースト/炎

ヒトモシの灯す明かりは
人やポケモンの生命力を
吸い取って燃えているのだ。(B)

明かりを灯して
道案内をするように見せかけながら
生命力を吸い取っている。(W)



+++



 本当は、知っていたよ。
 ボクが元気になるほど、キミが弱っていってるってこと。

 だけどボクにはどうすることも出来なかった。
 ボクは生きている限り(ゴーストだから生きるって言うのはおかしいのかな?)頭の火を燃やしていなければならない。
 これは周りの生き物から命をいただいている証拠だから。



 ねえ、キミは覚えてるかな。キミとボクが初めて出会った時のこと。
 ボクはとっても臆病で、同じ塔にいた他の子たちとお話も出来なかった。

 だからキミを見た時、最初は怖くてたまらなかったんだ。

 でも、すぐにわかったよ。
 キミとボクは似てるって。

 キミもボクと同じだったんだよね。

 キミも、寂しかったんだよね。



 一緒にいられて、ボクはどれだけ嬉しかったことだろう。
 キミは本当に優しくて、優しくて、優しくて。優しすぎるくらい優しくて。

 どんなに苦しくても、どんなに辛くても、ひとことも責めないで。
 ボクのせいじゃないんだよって、いつも笑ってくれて。

 ボクのせいだってわかってるのに。
 苦しいのも、辛いのも、全部ボクのせいだって知ってるのに。

 それなのに、キミはたくさん笑ってくれた。



 そして、とうとう。

 キミは、動かなくなった。



 星影がきらめく暗い空に、キミが最期に鳴らした鐘の音が響く。

 どうしてここを選んだのかな。
 ここがお墓だから?
 魂を安らげる鐘があるから?

 それとも、ボクと出会った場所だから?



 キミとボクはこの場所で出会って、たくさんのところに行ったよね。

 深い森で迷子になったり。
 大きな街でアイスクリームを食べたり。
 一緒に観覧車にも乗ったよね。

 暗い道ではボクが照らして。
 寒い夜は抱きしめあって。

 ボクはずっと君に甘えていたね。
 キミの体を傷つけてるってわかってたのに。

 それでも、ボクはキミと一緒にいたかった。
 ワガママだけど。

 キミと一緒にいたかったんだ。



 ごめんね。

 ごめんね。

 ワガママで、ごめんね。



 ずっと一緒にいてくれて、ありがとう。



 だいすき。



 ……あれ、どうしてだろう。
 輪郭がぼやけてきた。
 キミの顔をしっかり見ていたいのに、キミの顔が見えない。



 あれ、おかしいな、おかしいな。

 どんどん、暗くなってきた。

 暗い夜道は、ボクが、照らさなきゃ、いけないのに。



 …… あれ、 おか、 し、  な



 な、  にも、    み、    え な 





 ど、   して、  こ、   な、    く ら     ……









 ……………………











→→→Re:ともしび。




灯火。友死日。共死日。
(初出:2010/12/9 マサラのポケモン図書館)




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